【DELF B2作文対策完全ガイド】|頻出テンプレートとフレーズ集で一発合格!
語学試験の合否は「その時点での実力」だけでなく、試験対策の有無で大きく差がつきます。特にDELFでは、読む・聞く力は基礎力に左右されやすいのに対して、書く・話す力(筆記・面接)は「型」を覚えることで点を稼げるのが特徴です。
私自身、受験当時は余裕とは言い切れませんでしたが、2か月間の徹底した準備で試験を攻略し、一発で合格できました。
本記事では、『筆記試験』に関して、実際に準備して使ったテンプレートを公開します。
試験概要(Production écrite)
時間: 1時間(集団試験の一部として実施されるので、読解の解く速さによっては時間がかなり余ります。実際に多くの受験者が途中退出していましたが、それに惑わされず自分のペースで仕上げて見直しまですることが大切です!)
配点: 25点(全体100点中の1/4)
文字数: 250語以上(私の会場では総語数のカウントと記入を求められました)
課題: texte argumentatif(論証文)を書くこと。複数の視点を示し、議論を展開し、自分の立場を説得的に示す。
出題パターンの整理
試験では大きく次の3種類が出題されます。texte argumentatif(論証文)を書くという点では共通ですが、実際の出題状況にはいくつかのパターンがあります。
ここで大事なのは、argumenter という行為が単に「試験のテクニック」ではないということです。フランス語を使って社会の中で生き、他者とコミュニケーションをとっていくためには、この力が避けては通れません。
日本社会において「空気を読む」「迷惑をかけない」「非常識なことをしない」が大切であるように、フランス社会においては「自分の考えを整理し、論理的に意見を主張する」ことが人としての基礎能力になります。さらに、相手の意見を受け止めた上で応答する。このやり取りができて初めて「コミュニケーションを取れる人」と認められるのです。
文面だけ見ると「いや、それは日本でも同じでしょう」と思うかもしれません。しかし、日本で生まれ育ち、日本の学校で教育を受けていると、この力は体系的に鍛えられる機会がほとんどありません。これは優劣の問題ではなく、社会の歴史的背景と文化が築いてきたコミュニケーション様式の違いです。
ですから、この試験勉強を通じて学ぶのは「フランス流の作文術」だけでなく、フランス社会における実践的なコミュニケーションの基礎でもあります。そう意識すると、学習の質もぐっと上がり、単なる試験対策を超えた生きた学びにつながるはずです。
出題形式の種類
✅ Courrier des lecteurs(読者投稿)
新聞や雑誌への意見投稿。→ 社会問題や文化的テーマに対して読者を説得する。
✅ Article critique(批評記事)
映画・本・演劇・イベントなどを題材にした批評。→ 感想だけでなく、評価や改善提案を含める。
✅ Lettre formelle(形式的な手紙)
特に「市長への手紙」が頻出。私が調べた限りではダントツの出題率。実際に私の試験もこれでした。→ 礼儀正しい定型表現が必須。
形式別テンプレート集
ここからが本題です。出題形式ごとに 「何を書くか」→「フランス語例文」→「日本語訳」 の流れで示します。
1. Lettre formelle(形式的な手紙)
一番頻出の形式。市長宛ての手紙を想定して対策するのが鉄則です。
① 書き出し(名前、住所)
内容の前に形式を整えます。フォーマルな手紙の構成は以上のようになります。
解答用紙は何枚もありますので、ゆったりスペースを使って書いても問題ありません。
左上に自分の情報、その右下に相手の情報を書きます。
苗字は大文字にするのが慣習です。住所や郵便番号は適当でOKですが、違和感のないものを選びましょう。例えば、田舎の社会問題について書くのにParis だと不自然ですよね。とはいえ、一番大事なのはここで時間を使わずに暗記しておいた形式を書くということです!
ちなみに名前は「Jean MARTIN」や「Marie DUPONT」が無難です。考えるのが面倒なら是非上記の住所をそのまま使ってください。架空の私が考えたものですが、大事なのは形式です。
② 日付、場所
相手の情報を書いた下に、日付と場所を書き入れます。いつでもいいですが、私は練習の時から試験日を想定して書いていました。
③ 件名(Objet)
手紙の目的を一言で示します。
例:Objet : Opposition à la fermeture du parc public(件名:公園閉鎖への反対)
簡潔に表現するために以下の表現を暗記しておきましょう。
Objet : Requête concernant …(…に関する要望)
Objet : Opposition à …(…への反対)
Objet : Demande de révision de…(…の見直しの要請)
Objet : Proposition alternative à …(…への代替案の提案)
Objet : Plainte concernant …(…に関する苦情)Objet : Suggestion pour améliorer …(…改善のための提案)
④ 呼びかけ
日本語の「~殿」「~様」に相当する表現です。呼びかけの後には必ず「,」を置きます。ここまでは本番でサッと書けるように繰り返し練習しましょう。
Monsieur le Maire,(市長殿)
Madame la Maire,(市長殿・女性)Monsieur, / Madame,(名前が明示されていないとき)
📌 導入(立場と意図)
まず導入として「私は何に対して懸念を表しているか」を書きます。過去問や問題集をいくつか解く中で、DELF B2の市長への手紙に関する問題は大まかに以下の2パターンになる傾向があるとわかりました。
ということで、試験でそのまま使えるフランス語らしい言い回しや文法を含ませたテンプレが以下の通りです。2パターンですが、暗記の効率を高めるために2箇所のみが変化する形となっています。
導入パターン1:市長の決断に反対する場合
Je tiens à vous exprimer ma profonde préoccupation à l’égard de la récente décision concernant ….
En tant que résident dans votre ville depuis de nombreuses années (ainsi que président de l'organisation …), je suis particulièrement touché par cette mesure, dont les conséquences me semblent sérieuses.
Par ailleurs, je me permets également de vous soumettre quelques suggestions à ce sujet.
(最近の…に関するご決定に深い懸念を表明いたします。長年この町に住む住民(および…組織の代表)として、この措置によって特に影響を受けており、その結果は深刻であると考えます。つきましては、この件についていくつか提案をさせていただきたく存じます。)
導入パターン2:市長の不作為に反対する場合
Je tiens à vous exprimer ma profonde préoccupation à l’égard de la situation actuelle et du manque d’action de la part de la mairie concernant ….
En tant que résident dans votre ville depuis de nombreuses années (ainsi que président de l'organisation …), je suis particulièrement touché par cette absence de mesures, dont les conséquences me semblent sérieuses.
Par ailleurs, je me permets également de vous soumettre quelques suggestions à ce sujet.
(…に関して市役所が何の措置も取っていない現状について、深い懸念を表明いたします。長年この町に住む住民(および…組織の代表)として、この無策の状態によって特に影響を受けており、その結果は深刻であると考えます。つきましては、この件についていくつか提案をさせていただきたく存じます。)
📌 内容A 現状説明
「まず事実を提示する」パートです。基本的にここからは問題によって柔軟に発想していくことが求められますが、それでも使う接続詞は大体同じですし、抗議文という手紙の性質上、暗記した文章を使える確率は低くありません。
接続詞: Tout d’abord, / Pour commencer, (=「まず」)
フレーズ:
Je souhaiterais attirer votre attention sur la présence importante de déchets dans plusieurs quartiers de la ville.
(市内のいくつかの地区でごみが大量に散乱している状況にご注目いただきたいと思います。)
📌 内容B 提案・解決策
「問題を認識した上で、どうすべきか」を示すパートです。現状説明を受けて、解決策や提案を述べます。
接続詞:
Dans cette perspective, (=「この観点からすると」「そうした文脈で」)
En conséquence, (=「その結果」「したがって」「よって」)
フレーズ:
Il serait judicieux d’explorer des solutions alternatives plus équilibrées plutôt que d’opter pour une transformation radicale.
(急激な変化を選ぶよりも、よりバランスの取れた代替策を検討することが望ましいと思われます。)Il me paraît essentiel que des mesures appropriées soient prises afin d’assurer de meilleures conditions à l’avenir.
(今後より良い状況を確保するためには、適切な措置を講じることが不可欠であると考えます。)
📌 内容C 行動を促す(要請)
「だから具体的に行動してください」と強調するパートです。結びとして、市長に行動を求めます。
接続詞:
Pour toutes ces raisons, (=「以上の理由から」)
C’est pour cela que, (=「そういうわけで」「だからこそ」)
フレーズ:
Je vous prie instamment de reconsidérer cette décision et d’envisager des alternatives qui…
(以上の理由から、この決定を再考し、代替策をご検討くださるよう切にお願い申し上げます。)Je vous prie instamment d’intervenir dans les plus brefs délais et d’envisager des actions concrètes qui répondent aux attentes des habitants.
(できるだけ早急にご介入いただき、住民の期待に応える具体的な行動をご検討いただきたく存じます。)
ここまでの内容の部分は、問題文で何が求められているのかによって分量や段落の重点を変える必要があります。具体的な解決策を求められることもあれば、現状や市民の声を伝えることがメインの問題もあります。しっかり問題文を読んで、10分ほど時間を取って全体の構造をメモしてから書き始めることを強くお勧めします。
⑤ formule de politesse(結び)
最後に「感謝+丁寧な締め」で終えます。ここは丸暗記でOKです。
フレーズ:
Je vous remercie par avance de l’attention portée à ma proposition, et reste à votre disposition pour toute précision complémentaire.
(この提案にご注目いただけることを前もって感謝申し上げ、追加の説明が必要であればいつでもご対応いたします。)Dans l’attente d’un retour favorable, je vous prie d’agréer, Monsieur le Maire, l’expression de mes salutations distinguées.
(ご好意あるご返答をお待ち申し上げますとともに、敬意を表してご挨拶申し上げます。)
⑥ 署名
最後に右下に署名をして書き終えます。
2. Courrier des lecteurs(読者投稿)
記事を読んだこと+意見を述べる意思を必ずセットで表現します。
フレーズ:
Je me permets de vous écrire afin de réagir à votre article publié le…
(…日に掲載された記事に反応するために筆を取らせていただきます。)En tant que lecteur fidèle de votre revue, je souhaite vous faire part de ma réflexion concernant…
(貴誌の愛読者として、この件に関する私の考えをお伝えしたいと思います。)Ayant récemment pris connaissance de votre article intitulé « … », je souhaiterais vous faire part de mes réserves.
(最近「…」という記事を拝読しましたが、その点について疑念をお伝えしたいと思います。)
3. Article critique(批評記事)
作品を紹介+評価+提案で構成します。
例:
Je me permets de vous écrire dans le but d’attirer votre attention sur un sujet qui me semble important.
(私が重要だと考えるテーマについて、ご注目いただきたく筆を取らせていただきます。)J’ai lu avec attention le message de [prénom] et je comprends son point de vue. Cependant, je ne suis pas tout à fait d’accord avec lui/elle, et j’aimerais exprimer mon opinion à ce sujet.
([名前]さんの投稿を注意深く読み、その見解を理解しました。しかし、完全には同意できないため、この件に関して私の意見を述べたいと思います。)
採点基準と準備のコツ
👉 [採点表はこちら(France Éducation International公式)]
評価ポイント
弱点を把握する(文法?構成?語彙?)
模範解答を写経して定型表現を体に入れる
制限時間で「アイディア出し→全体の構成作り→十分な文字数を書く→見直し」まで練習
まとめ
DELF B2は「型を知って準備するかどうか」で大きく結果が変わります。特に筆記試験は、暗記できる定型表現が多いため、今回紹介したテンプレを押さえておくだけで確実に得点を稼げます。
私自身も、ここで紹介した方法で準備したことで「当日安心して試験に臨めた」という実感がありました。
そして何よりも伝えたいのは、texte argumentatif を楽しんでほしいということです。フランス社会では、自分の意見を主張し議論することが「当然の権利」であり、積極的に評価されます。世間がどう言おうと、まず声を上げること自体に価値があるのです。私は試験対策でこの形式に慣れた結果、試験後に本当に組織へ抗議文を送ってしまったくらいです(笑)。
日本ではなかなか培いにくい感性かもしれませんが、こうした経験は言語学習を超えて、自分の生き方や表現の仕方に大きな影響を与えてくれます。
ぜひあなたも、このフレーズ群を武器に一発合格を狙ってください!
文章の構成やつなぎ言葉の使い方については、面接対策の記事でさらに詳しく取り上げています。作文にも大いに役立つ内容なので、ぜひそちらもチェックしてください!