フランス語ってどんな言語?
フランス語と聞くと、どんなイメージがあるでしょうか?
なんとなくオシャレな感じがする。なんか読み方が難しそう。
そんな印象を持つ人も多いかもしれません。
詳しく知らなくても、「フランス語」と聞けば何かしらのイメージが浮かんで、どちらかといえば世界の中でも比較的“身近な外国語”という印象を持つ人も多いのではないでしょうか。
レストランの名前の由来を調べてみたらフランス語だったり、パン屋さんやケーキ屋さんに行けば、カタカナのフランス語で書かれたスイーツがたくさん並んでいます。
それだけ、日本の生活の中にもフランス語は意外と浸透しているんですね。
歴史的にも、フランス語は世界の中で大きな力を持った言語でした。
そう、ナポレオンも、ロシア皇帝アレクサンドル1世も、ピカソもフランス語を使いました。
18〜19世紀のヨーロッパでは、上流階級の共通語がフランス語だったんです。
さらに遡れば、フランス語のルーツであるラテン語は、まだ分化する前はスペイン語やイタリア語と同じ「ロマンス語族」の源流でした。
英語の上級語彙の約30〜40%はフランス語から流入したとも言われています。
イギリスとフランスは地理的にもお隣同士で、長い歴史の中で互いの言語が影響し合ってきたからです。
オリンピックの開会式では、なんと英語よりも先にフランス語が公式言語としてアナウンスされます。
実は「国際語」としての地位を、今の英語の前に担っていたのがフランス語でした。
そんなわけで、フランス語は文化的にも歴史的にも、世界に広がりを持った言語だということができます。
今回の記事では、大学からフランス語を学び始め、パリ留学で実際にフランス語で授業を受けていた私が、「フランス語ってどんな言語なのか?」を、できるだけ身近な切り口でご紹介します。
これから学ぶ方や、すでに学んでいる方は、「自分がなぜフランス語を学んでいるのか」を再確認するきっかけになるはずです。
大学入学を控え、どの外国語を選ぼうか迷っている新入生にとっても、「フランス語を学ぶとどんな世界が広がるのか」をイメージできる内容になっています。
「フランス語なんて勉強してる暇ないよ!」という方も、異文化交流の話題づくりや、日常のちょっとした豆知識として楽しんで読んでみてくださいね。
どこで使われてる?
フランス語はフランスだけの言語でもなければヨーロッパだけの言語でもありません。
まずは、どの国でフランス語が使われているか見ていきましょう。
「使われている」と言っても色々な見方があります。一つの国の中でも、一部の地域のみで使われていることもありますし、フランス語は話せるけど日常的には地域言語を使うというようなこともあります。
ですが、ひとまずここでは公用語として認定されている国をあげてみます。
2025年現在、フランス語が公用語として指定されている国の数は以下の通りです。
※()はその国のフランス語以外の公用語です
ヨーロッパ
- フランス
- ベルギー(オランダ語・ドイツ語)
- スイス(ドイツ語・イタリア語・ロマンシュ語)
- ルクセンブルク(ルクセンブルク語・ドイツ語)
- モナコ
アフリカ
- ベナン
- ブルンジ(キルンディ語、英語)
- カメルーン(英語)
- 中央アフリカ共和国(サンゴ語)
- コモロ(アラビア語・コモロ語)
- コンゴ共和国(※国語=リンガラ語・キトゥバ語)
- コンゴ民主共和国(リンガラ語・キクユ語・スワヒリ語)
- コートジボワール
- ジブチ(アラビア語)
- 赤道ギニア(スペイン語・ポルトガル語)
- ガボン
- ギニア
- マダガスカル(マダガスカル語)
- ルワンダ(英語・キニヤルワンダ語、スワヒリ語)
- セネガル
- セーシェル(英語・セーシェル・クレオール語)
- トーゴ
- チャド(アラビア語)
北アメリカ・カリブ
- カナダ(英語)
- ハイチ(ハイチ・クレオール)
インド洋
- ヴァヌアツ(ビスラマ語・英語)
- ブルキナファソ
- マリ
- ニジェール
上記3国は脱植民地主義・反フランス感情の高まりを受けて公用語であるフランス語が作業言語へと格下げになりました。ニュースなどでは「サヘル三国」と一括りにしてよく語られます。実際には現在も実務・行政・外交などではフランス語が使われていて、公用語の格下げは象徴的な意味合いがかなり強いです。
アフリカの『公用語』をめぐっては英語圏でも同じことが起きていて特にケニアでは実際にスワヒリ語の比重が年々高まっています。
言語に限らず、この流れはアフリカの今を知りたいなら重要です。
補足2:フランス語のクレオール言語
- モーリシャス(公用語は英語だがフランス語から派生したクレオール)
フランス語の広がりは歴史的にクレオール言語を多く生み出しました。クレオールとは、ある言語が現地の言語と混ざり、それを母語として話されるようになった言語のことです。書き言葉(新聞など)ではフランス語が使われることもあります。クレオール言語は他にもフランスの海外圏(レウニオンなど)にも存在し、固有の文化や音楽がアイデンティティとなっています。
余談ですが日本語からできたクレオールも存在し、宜蘭クレオールというのが台湾で話されています。
補足3:公用語ではないものの、フランス語が単なる外国語以上の地位を持つ国
- アルジェリア
- モロッコ
- チュニジア
- アンドラ
- カンボジア
- ラオス
- モーリアニア
- レバノン
これらの国では歴史的な植民地支配の影響を受けて、公用語としての地位を持っていないもののフランス語が特殊な位置付けを持っています。特に北アフリカのマグレブ地域(モロッコ、アルジェリア、チュニジア)ではほとんどの人がフランス語の教育を受けています。カンボジアやラオスは影響がそれほど強くありませんが、高齢者や知識層には一定の浸透があるようです。レバノンでは行政、教育でもかなりフランス語が普及していて、実際にフランス語が流暢なレバノン人に何度も出会ったことがあります。
こうして見ると、フランス語はヨーロッパ発祥でありながら世界中で広がっている「地球規模の言語」だとわかります。
もちろん、この広がりの背景には残虐な植民地化や言語的な統制の歴史があったことを忘れてはいけませんが、この辺りはまた歴史や文化に関する記事で触れることにしたいと思います。
また、上に挙げたすべての国において、母語としてフランス語が使われているわけではなく、日常的には地域言語だが高等教育ではフランス語が使われるということが多いです。
フランス語の広がりは「植民地支配を通じて普及した」という意味では中南米のスペイン語(ブラジルのポルトガル語)圏と共通しています。しかし両者には圧倒的な違いが存在します。
フランス語の普及は、19世紀後半から20世紀前半にかけての植民地支配を通じて進みました。そのため、フランス語が現地社会に浸透してからまだせいぜい100〜150年ほどしか経っていません。多くの国では独立後(1960年前後)に公用語として残されたという経緯もあります。
一方、中南米におけるスペイン語(およびブラジルのポルトガル語)の広がりは、16世紀初頭(およそ500年前)からの植民地化にさかのぼります。
このため、スペイン語・ポルトガル語は現地社会に圧倒的に深く根づき、メキシコからアルゼンチンに至るまで「母語」として定着しました。(もちろん先住民の言語文化も忘れてはなりませんが)こうして、スペイン語(ポルトガル語)は各国で独自の発音・語彙・表現が発達し、すでに地域文化の一部として成熟しています。
そうは言っても、広く言えばここでリストアップした国が『フランス語圏』といっていいことは確かで、フランス語を身につければこれらの国のことをより深く知れるということに間違いはありません。
また、フランス語は今後も衰えることのない言語だということもできます。フランコフォニー国際機構(OIF)が出した2024年のデータによると、フランス語を話す人(母語+第二言語を含む)は約3億2,000万人とされています。
そのうち、母語話者は約8,000万人、残りの約2億4,000万人は第二言語話者で、総数はアフリカの高い出生率に牽引されて今後も伸び続け、2050年には7億人に達するとの予測もあります。
どのくらい使われてる?
では、フランス語話者は具体的にどのくらいの比率でどの地域に分布しているのでしょうか?ここでは第二言語としてフランス語を話す人も含めた、フランス語を身につけることで基本的なコミュニケーションが取れる割合ということで見ていきます。
ざっくりになりますが、調べた限り以下のようになります。数字とともに、私の経験を踏まえてどのような世界が広がるかをコメントしてみます。
アフリカ・サハラ以南:全体の半分を占める
コンゴ民主共和国、コートジボワール、セネガル、カメルーン、マリ、ブルキナファソなどの西アフリカ地域がアフリカの中でも最大のフランス語圏です。それぞれの地域言語がいくつもありますが、都市部では教育・行政・メディアの主要言語となっていて、この地域の共通語としての役割も果たしています。 多くの人が地域語+国の言語+フランス語など複数の言語を話します。他にも、マダガスカルやコモロなどインド洋側にもフランス語圏は広がっています。フランス:3割弱
次にフランスですが、地域によってもアクセントや言葉が若干異なります。日本語でも方言があるようにフランスにも違いがあります。一番ざっくりとした分け方は北と南ですが、一般的に南の方が〜感じになるとされています。
またフランスには海外圏があることも忘れてはいけません。いわゆるFrance d'outre-mer は大西洋、太平洋、インド洋に存在していて、カリブ海やインド洋のマルティニーク、グアドループ、レユニオン島でフランス語が話されます。また、フランス語と地域語が歴史的に混ざってできたクレオールもあり、言語的にも文化的にも興味深い地域です。
一部の島で独立を求める運動などが度々強くなりニュースにもなります。文化の多様性の裏側には、フランスと世界の歴史が詰まっています。
北アフリカ(マグレブ):1割強
モロッコ、アルジェリア、チュニジアなどが主な国ですが、こちらもサハラ以南の国同様、 教育・ビジネス・外交ではフランス語が事実上の共通語となっています。北アフリカはアラビア語の繋がりがあり、またフランスの中での移民の存在感も大きい国々です。私がパリに留学したときも北アフリカからの学生とはたくさん出会いました。実際モロッコとチュニジアに旅行に行った時にもアラビア語を除くとフランス語が英語よりも通じる感覚がありました。ローカルなお店でも立ち寄って話そうとすると、全員がペラペラなわけではありませんが、必ず一人はフランス語ができる人がいる感じです。
一方でチュニジアの田舎の方に行った際はフランス語が通じにくくなるなる感覚がありました。それでも日本人のどんなに英語ができない人でもI don’t speak Englishくらいは言えるようにje ne comprends pas le français (フランス語はわかりません)は全員言えると言った感じでしょうか。やはり嫌々な人もいるでしょうが学校で授業がある分最低限の言葉はわかるという人が多かったです。
もし今のフランスを知りたいならこのマグレブ地域の人や文化について知ることは欠かせません。
カナダ(主にケベック州):7%
言われてみれば、と思い出す人も多いカナダのフランス語圏は東のケベック州をを中心に広がっています。公用語として英語と並び、文化・教育・法制度も独自なケベック州ですが、発音がフランスとは違うことが特徴としてよく言われます。フランスと同じ先進国としてフランス語圏で生きる人のキャリアの広がりにもなっていて、言語の安心感もあってか移住先としてフランス人に選ばれることもあるようです。そういう特集の番組を見たことがあります。
フランス以外のヨーロッパ:2.5%
ベルギーでは、フランス語はワロン地方を中心に広く使われています。このワロン地方とはベルギーの南側(フランスに近い地域)の名称で、オランダ語(フラマン語)を使う北のフラマン地方とは経済格差や政治的な対立もあります。ベルギーのフランス語と言って有名なのは70、80、90の言い方の違いです。バスの番号が90番だったりして、実際にベルギーで使う機会がありました!
ルクセンブルクではドイツ語、ルクセンブルク語と並んでフランス語は公用語の1つです。実際にルクセンブルクに行ったときはフランス語が普通に通じました。首都、ルクセンブルクのとあるモールでルクセンブルク語の教材を探していると店員さんに尋ねると、『ドイツ語のやつかフランス語のやつどっち?』と言われ、本当にそれぞれの言語が共存しているんだと思いました。
スイスでもフランス語はロマンシュ語圏に属しており、ジュネーブやフリブールなどの地域で使われています。スイスはフランス人から見ても物価が高く給料はいいので、フランスのスイス国境付近に住んでスイスに通勤したりする人もいます。また、モナコではフランス語が主要言語です。ニースから電車ですぐなので感覚としてはフランス南部の街という感じかもしれません。
レバノン
母数としては少ないですが、かなり知らない人が多いので挙げておきたいのが中東に位置するレバノンです。第一言語はアラビア語のレバノンですが、フランス語は教育やビジネスの場でも重要な役割を果たしており、特に都市部ではフランス語が日常的に使用されています。実際、レバノンではフランス語が第二言語として非常に強い地位を占めていて、学校教育でもフランス語は非常に重要な位置を占めています。特に首都ベイルートやその他の都市ではフランス語の使用が目立つそうで、私もいつか行ってみたいと思っています。レバノンは非常に国外在住者が多い国で、その割合は7割にも及ぶとされています。私がパリにいた時にもそこら中にレバノン料理屋があったのを覚えています。衝撃の脱出を成功させたカルロスゴーンもフランス語でインタビューを受けたりしていました。
世界中で学ばれるフランス語
ここからは、少し視点を変えて外国語としてフランス語がどのくらい、誰に学ばれているかというのを見ていきましょう。上に挙げたように旧植民地の関係で広く学ばれているフランス語ですが、学習者はその領域にとどまりません。
実際に話者数を見ると、母語話者では10位にも入らないフランス語は外国語として話す人も含めると第5位になります。
私がこれまで出会ってきたフランス語を学ぶ外国人(日本人含め)をパターン別に見ていきます。
近隣のロマンス諸語から入ってくる多言語話者
世界には多くの日本人が考える以上に多言語話者はたくさんいるもので、同じ系統の言語をすでに身につけている人なら新しい言語を話すのはそこまで難しいことではありません。フランス語はスペイン語、イタリア語、ポルトガル語、ルーマニア語などと同じロマンス諸語に属しており、これらを母語とする人たちが趣味や、また言語や文化的に近い国としてフランスに移住してきたりするために勉強しています。
特にスペイン語やポルトガルは中南米への大きな規模の広がりもあり、彼らは大学でフランス語の授業をとればすぐに初級レベルを終えてしまい流暢でなくともある程度コミュニケーションが取れるようになります。
食・文化・芸術など、フランス全般に関心がある人
パリコレ、カンヌ映画祭からフレンチまで、このフランスが持っている文化的な影響力や憧れは説明するまでもないと思います。(日本人は時にそれが強過ぎてパリ症候群なんていうものも生まれるわけですが、、)パリが毎年のように観光客数1位を獲得することからも分かるように、世界中の人がフランスに対する興味や関心を抱いていることは確かです。
フランス語そのものの音の美しさをきっかけにフランス語を始める人もいますし、本格的にフランスでシェフとしての修行をするためにフランス語を学ぶ人もいます。はっきりとした興味がない場合でも、フランス語を学べば世界中のこういうパッションを持った人たちと話せるということです。
歴史的なつながりを持つ人
ここまで何度も触れた通りフランスは世界的に植民地を広げた歴史があります。ベトナムやカンボジア、ラオスは元々フランスの植民地だったためにフランス本土に一定の移民が存在したり、フランス人との血縁関係を持っている人たちがある程度います。そのため、人それぞれですが、これがきっかけとなってフランスとの接点広げるためにフランス語を学ぶ人がいます。フランスにいてこういう人とかなり遭遇しました。
国際機関で働きたい人
私がパリに留学をし始めた時出会ったあるジョージア人は、小学生の時からフランス語を学んでいて、そのほかに英語やスペイン語、ロシア語も流暢に話せる大学生でした。そんな彼になぜフランス語を勉強し始めたか聞くと、その理由は国際機関で働きたいからということでした。
国連をはじめとする国際機関で働くためには国連公用語(英語、スペイン語、フランス語、ロシア語、アラビア語、中国語)の6つの言語のうち、3つを話せた方がいいと言われています。
フランスは文化的な要素が強い言語である一方で、17世紀から18世紀にかけて、フランス語はヨーロッパの学術言語の一つとして広く使用されました。啓蒙時代の哲学者たち(ルソー、ヴォルテール、モンテスキューなど)は、フランス語で著作を発表し、学術的な議論や知識の共有の場としてフランス語が重要な役割を果たしましたし、現在の身近な例で言えば国境なき記者団をはじめとするジャーナリズム活動など、フランス語を通じて日本語や英語では得られない(得にくい)視点の情報に触れることができます。
ということでビジネスとは少し違った国際的なキャリアを目指している方には必須の言語です。
ここには挙げませんでしたが、シンプルに学業や就労目的でフランス語を学ぶ人たちも大勢います。
ヨーロッパの昔の貴族
一昔前の話になりますが、ルイ14世(太陽王)の時代、フランス語はヨーロッパ宮廷で使われる公用語となりました。ヨーロッパの貴族はこぞってフランス語を学び、それが英語の上級語になったわけですし、影響はロシアにまで及びました。トルストイの「戦争と平和」では、ロシアの貴族がフランス語で会話していて、教養と社会的地位の証となっていました。むしろフランス語の方が得意だという人もいました。
だからなんだということですが、フランス語は今の世界的に限らず、歴史的にも守備範囲が非常に広い言語だということです。
例えば、第一次世界大戦のヴェルサイユ条約はフランス語で書かれましたし、ナポレオン戦争後のウィーン会議はフランス語で行われました。
フランス語は難しいの?
次に、フランス語の言語そのものについても触れておきます。
色々書いていますが、どの言語も結局はじめは単語と文法の勉強ですから、そこについて知らないと具体的にフランス語がイメージできないと思います。
文法面
まずフランス語の文法ですが、基本的には中学校の英語の授業を思い出してもらえればいいと思います。大きな枠ですが、フランス語も英語も同じインド・ヨーロッパ諸語に属していて、大まかな構図は共通点が多いからです。
まずはあいさつ表現を学びながら発音を勉強し、be動詞的な基本表現を学び、一般動詞や形容詞を学び、動詞は過去や未来をはじめとしたの時制などと、文法事項を一つ一つクリアしていきます。
一方で英語と違うのは名詞が男性名詞、女性名詞に分かれていることや、動詞の活用が細かいといったロマンス諸語の特徴です。
総じて、フランス語の文法は最初の暗記が肝心です。最初の一年間は名詞の性別や動詞の活用表と睨めっこすることになるかもしれませんが、そこを越えれば文法が難しいとは言えないと思います。
特に、もし英語が得意であればフランス語の基礎を身につけた後はお馴染みの単語がたくさん登場するはずです。アカデミックな単語、少し抽象的な単語などになると会話レベルでは全く異なる英語とフランス語の単語が急に仲良しになります。これは歴史的にイギリスの上流階級がフランス語を持ち込んだり、その逆があったからです。英語ネイティブのフランス語初心者が読むなら、フランス語は子供向けの絵本より新聞のほうが読みやすいかもしれません。
発音が難しい?
フランス語の発音はなんだか難しそうという人もいるかもしれません。確かに特徴的な鼻音があったり読み方が最初は慣れないことがそう言われる原因で、私も学習を始めた時はそうでした。ただ、一度読み方を覚えてしまえばフランス語で読めない単語はありません。英語はアルファベットの組み合わせが同じでもいろんな読み方があって、その単語を知らないと発音できない単語がたくさんあります。日本語の漢字なんてもっと学習者泣かせで、漢字を知っていないと発音できない上に読み方がたくさんあるなんてこともありますよね。
発音は最初に完璧にしたほうがいいという意見もありますが、個人的には発音が完璧じゃないことが理由でそこで立ち止まってしまってモチベーションを無くしてしまうのは本当に勿体無いことだと思っています。そもそも、初めて学ぶ言語の音が始めから完璧だなんて無理なことです。発音記号というのが存在しますが、言語を話す時実際には抑揚やアクセント、話の内容によっても発音が都度変わることがほとんどです。だから、発音はそこそこにして、どんどん文法を進めていくべきというのがアドバイスです。
学習環境面(教材など)
外国語を学ぶにおいて身を置く環境は、言語そのもの以上に言語学習に影響する要素だと私は考えています。日本でフランス語を学ぶ環境はどれくらい整っているでしょうか?
結論、フランス語は日本でも比較的学びやすい言語だということができます。
私は本屋や図書館に訪れると必ず外国語コーナーに行きますが、フランス語の教材がない本棚は小さな書店を除いてみたことがありません。教材の種類も豊富で、初級だけでなく中級者向けのレベルの橋渡し的な教材もありますし、文法に特化したものからフレーズ集などもたくさんあります。
フランス語のコンテンツはどうでしょうか?Netflixを初めとしたサブスクでフランス語のドラマや映画はたくさんあります。ものによっては日本のアニメにフランス語の字幕が付いているものもあります。
YouTubeやSNSのコンテンツもたくさんあります。フランス人のチャンネルやアカウントはもちろんのこと、日本人がフランス語を解説しているものも簡単に見つかります。
独学に自信がない方でも、語学学校や大学の課外授業などでフランス語講座はよく見かけますし、オンラインのものもたくさんあります。
現在海外に住んでいて他の言語から学ぶという場合でも、フランス語は世界的に学ばれている言語ですので、教材には困らないと思います。
試験
フランス語の試験はどうでしょうか?
公的な試験は自分のレベルを測ったり、よりレベルが上がって正式に自分の語学力を証明したいときに必須です。
そして、試験があるということは教材や対策講座が売れるのでたくさん作られ、質が上がり、YouTubeでは無料の解説動画が上がってくるので自ずと学習環境は整っていきます。
現在フランス語の試験というと大きく分けて3つの試験があります。
DELF・DALF
DELF・DALFはフランスの教育省が行なっていて、最も国際的に認知されているフランス語試験です。CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)に基づいた6段階構成で、合否判定型となっています。
フランス留学やフランスへの移住・永住権申請の際にも利用されるなど、実用的価値が高いのが特徴です。
また、一度合格すれば生涯有効という点でも、英語のTOEICなどとは異なります。
日本では主に6月(春)と11月(秋)の年2回実施されており、
DELF:A1〜B2レベル
DALF:C1・C2レベル
に対応しています。
4技能(読む・書く・聞く・話す)を総合的に評価する本格的な試験で、結果が出るまで時間がかかる点も特徴です。
フランス語能力検定
通称「仏検」は、日本国内で最も受験者の多いフランス語試験です。位置づけとしては、英語における英検に近い存在です。
DELF・DALFが国際的資格であるのに対し、仏検は主に国内向けの資格ですが、履歴書や就職活動で「フランス語資格」として書きやすく、2級以上を取得するとアピール材料になります。
また、DELF・DALFが4技能型で面接や作文も含むのに対し、仏検は文法力・読解力重視の出題傾向です。そのため、やや皮肉な言い方になりますが文法中心の英語学習で育った日本人が点数を取りやすい試験だとは思います。とにかく就活で資格欄を充実させたい大学生などには、取り組みやすい試験かもしれません。
TCF(Test de Connaissance du Français)
TCFは、知名度こそやや低いものの実用的な試験です。合否ではなくスコア制で、CEFRレベルを数値で示します。
試験構成は、読解・リスニング・作文・面接とバランスが良く、DELFと似ていますが、問題の難易度が徐々に上がる形式が特徴的です。
フランス留学の出願では、DELFの代わりにTCFのスコアを提出できる場合もあります。
柔軟性のある評価方法のため、フランス語力を幅広く証明したい人には有用です。
学ぶメリット・デメリット
ここまでの内容を踏まえてメリット・デメリットをまとめておきます。個人的にどの言語を学んでも何かしら新しい世界が広がるので学ぶデメリットはないと思っていますが、あえて出してみます。
メリット
国際性の広さ:欧州+アフリカ+カナダ+国際機関で通用し、英語以外の回路を持てる。キャリア差別化:英語+αとして評価されやすい。特に国際協力・外交・観光・食・ラグジュアリー・学術に強い。
上級語彙の推測力:英語と語彙が重なる領域が多く、学術・抽象語の読解が伸びる。ラテン語由来の言葉に強くなれる。
文化資本になる:映画・文学・美術・料理・ファッションなど一次情報に触れられる。
アフリカ市場へのアクセス:急成長と人口ボーナスを迎えるアフリカでビジネスチャンスを狙っている場合、フランス語圏ではフランス語ができるかどうかは大きな違いになる。
知的教養の厚み:啓蒙思想〜現代思想までの一次資料に直接当たれる。少し遡って歴史軸で視野を広げたいなら相性がいい言語。
デメリット
即効性は他の言語に劣る:世界の“最低限コミュニケーション”は英語が依然優位。もし使いやすさや市場価値を上げることだけを求めるなら、他の中国語などが圧倒的にお金になる。どんな人におすすめか
色々書いてきましたが、最後に私の経験を踏まえて今日からフランス語を学ぶべき人はどんな人か発表します!美術・芸術・ファッション・食など、文化的営みに興味があり、より深く「考える言語」として使いたい人
空気に縛られずに思ったことを率直に主張し、議論を楽しみたい人
→ フランス語圏では「主張」という概念が、思想や価値観を深め、対話を通じて思考を掘り下げるための手段として重視されます。議論を通じて自分の考えを洗練させることが尊重される文化が根付いていると思います。(あえて英語と比較するなら、英語圏では効率的な自己主張や利益追求が重視される傾向がある点と私は考えています)
→ スペイン語・イタリア語などロマンス諸語への拡張が容易で、語学的冒険に向く。ただ、ロマンス諸語内でのこだわりがない場合はスペイン語の方が始めやすいと思います。
「自由に考える力」を鍛えたい人
→ “合理的に説明する文化”を持つフランス語は、思考の筋道を鍛えるのにうってつけです。(少なくとも”西洋的”な論理には強くなれます。)
以上です!
もし感想や、他に疑問点などがありましたらぜひコメントしてください!