【体験談】日本語パートナーズと本業の兼ね合い|応募者のリアルな悩みと決断


今回は日本語パートナーズの派遣生として、多くの派遣生が応募の際に悩んだ本業との兼ね合いについてまとめていきます。

日本語パートナーズの活動中は、現地で各地の学校に一人で派遣されることが基本です。(大きな町の場合同じ学校の複数校にパートナーズがいるということもあります)

一方で研修期間中は一ヶ月間の間同じ施設で生活を共にする中で、互いがどのような状況の中で応募に踏み切ったのかある程度のパターンが見えてきました。

ほぼ全ての人に共通することとして私が気づいたのは、半年やそれ以上の期間をまとまって用意するのはそれほど容易ではないということです。そんな中、私たちパートナーズはどのようにして派遣に十分な期間を空け、どのような葛藤があったのか、まとめていきます。

最終的に決断するのは応募者一人一人ですが、日本語パートナーズのホームページなどには当然載っていない、過去の参加者のリアルな事例を見ることで、応募の際の参考にしていただけると嬉しく思います。

※そもそも『派遣生にはどんな人が多い?』という点はこちらの記事でもまとめています。

大学生(休学)

まずは大学生の休学型です。
休学の制度や取得方法は各大学によって細かい点が異なる可能性はありますが、基本的には「大学には在籍しながら、学期を進めず大学の活動の休みを取る」とまとめられると思います。

休学中は授業料等の学費は発生しませんが、在籍にあたっての休学費が必要となります。この費用については要確認です。手続き等、責任を持って行う必要があります。

学年は様々でしたが、やはり2、3年生が多かったように感じます。大学の留学制度があまり充実していないことや、物価高による留学への経済的な抵抗感が理由で、海外への興味や関心があるものの大学制度内でのチャンスが少なかったという派遣生も多くいました。

さて、この休学型の派遣生が応募にあたって葛藤したのは主に、ゼミ卒論・就活です。

ゼミと卒論に関しては卒業の要件になっている大学が多く、担当教授とのやり取りの中でどのように中断、再開するかが話し合われることが多かったようです。中には休学をせず派遣中に卒論を仕上げる予定だという4年生の強者もいましたが、このように学業に関しては大学や学部、そして活動をしているコミュニティ内でのコミュニケーションが鍵になりそうです。

もう一つの葛藤は就活です。休学をするのであれば卒業年度が遅れるため、28卒、29卒など時期についてはそこまで問題になりません。ただ、現在の就活の一般的な流れを抑え、どのように工夫するかが必要になります。毎年微妙に変わってはいるものの、現在のおおまかな流れとして、3年生の夏インターンが早期選考直結となる企業も多いため就活の本番開始になりつつあり(参加は必須ではなく、本選考のみに参加する学生も多いですが)、そこから説明会、OB訪問、仕事体験のようなイベントが秋から冬にかけて続き、3年生の終わりの春休みから4年生の6月ごろにかけて本選考が行われるというスケジュールが一般化しつつあります。

そのため、上記の期間に日本語パートナーズとして現地に渡航し、日本での就職活動を検討している場合、自分の参加する就活の採用活動が今どの段階にあって、進捗状況としてどのくらいの地点にいることが望ましいかを理解しておく必要があります。

27卒で就活を終えたばかりの身としては、本選考の最終選考以外はほとんどオンラインでこなせることが多かったため、正直現地でも進められないことはないと思います。ただ、対面インターンシップや選考の経験は就活での気づきや練習としても重要だったと感じています。そのため、渡航前にできることがあれば最大限し、現地でも少しずつすすめるというのが最適解になりそうです。

このようなハードルがありつつも、学生の参加者は共通して、「半年間、一年間は社会人になればよりハードルが高い」ということを意識して休学の決断をしていたと思います。

私も実は大学時代に休学を経験しましたが、やはり小学校1年生から同じ学年で上がってきた一つのグループ外れることは、やはり当事者としては大きな決断です。年齢が上がるにつれ「学年意識」は薄れていくのではないかと思いますが、保守的な社会、集団で生きているほどこの意識は一つの壁となります。(※休学してしまえば学年など特に重要ではないと気づく。)


大学生(既卒、新卒直前型)

最近では新卒の定義が「既卒3年以内且つ就労経験のない者」といった企業も増えてきたこともあり、大学は卒業したものの、就職前に日本語パートナーズに参加するといった人もいました。私もその一人です。私は7月に最終試験を終え卒業という形で、就職も4月ごろに終えたので4月から社会人になるまで半年以上時間が開いていました。

今回の記事のテーマである「本業との兼ね合い」という点においてはこのタイプが一番悩みの少ない人たちだったグループの一つだと思いますが、それでも半年という期間の中でいくつかの葛藤がありました。

まず一つは就職が決まっている参加者が悩んでだ内定者の壁です。どのような企業へ内定しているかにもよりますが、内定者には何かとイベントが付きまといます。企業としては採用早期化の中で、内定辞退も年々増加傾向にあり、それを防ぐべく内定者の囲い込み活動が激しくなっています。もちろん学生としての活動が優先されるべきだという落ち着いた企業も多いのですが、そのような活動が多い中で、真面目な内定者であるほどそれらイベントへの欠席に二の足を踏んでしまうのではないでしょうか。

また、10月1日に行われる企業の多い内定式に関しても、その期間が派遣中である場合日本語パートナーズは帰国を認めない方針を明確にしています。これも合意書等で明記されていますが、公用旅券での派遣であることも相まって、途中帰国や一時帰国は原則禁止と厳しい規則が定められています。法的な観点から言えば、入社にあたって内定式への出席に法的義務はないため、内定者には欠席の権利があります。私は正直に事情を説明し、内定式の欠席の連絡をしました。どうしても入社後等への印象が気になるという方は、その代わり、オンラインで開催されるイベントや渡航直前に行われるイベントなど、参加可能であるものはなるべく顔を出すといった意欲を見せることが大事だと思いますが、基本的に日本語パートナーズという事業に参加することに自信を持って丁寧な連絡をすれば問題はないでしょう。

親からの反対

実家暮らしの大学生などにとっては、家庭によっては親からの反対というのも壁の一つになりえます。一人暮らしを経験したことがなく、生活インフラを自分で俯瞰したことのない人にとって日本語パートナーズはある程度いい経験になると思います。海外でありながら居住地の選定は基金が行なってくれるため、比較的安心感もある中で挑戦ができます。生活インフラの物理的な親離れは、独り立ちに大切な要素だと私は考えています。

新卒

新卒採用枠が広くなりつつあるとは言っても、まだまだ卒業した次の年度から入社が多くの会社で基本の採用方針となっています。そのため、派遣プログラムへの参加後に就職先を決める場合は、進路選択に関してある程度の不確実性が伴うことは避けられません。ただ、研修生の間ではこれを比較的ポジティブに開かれた未来として考える人が多く、このようなマインドの人なら問題なさそうです。また、卒業後すぐにパートナーズに参加する人には日本語教育系の専攻をしていた人もおり、彼らにとってはキャリアの一歩目として本業へ繋げていく考えの人もいました。実際に国際交流基金が開催するの公式説明会などでも、日本語パートナーズに参加した人がその後日本語教師としてキャリアを積み、日本語専門家などよりステップアップしたプログラムに参加した先輩の例が取り上げられていました。

社会人

日本語パートナーズは学生が多いのでは?という感覚を持っている人も一定数いるようですが、実際には現役世代の人たちもかなり派遣生としてプログラムに参加していました。そのようないわゆる社会人としてパートナーズへの応募に踏み切った人たちの葛藤を簡単にまとめます。

教師

日本語パートナーズは直接的に教師として日本語を教えるのではなく、あくまで現地教員のサポートという形で教育に携わります。とはいえ、NP(日本語パートナーズ=NPと略して呼んでいます)が主体となって行う活動も文化紹介を中心として組み込まれており、教師としての経験がダイレクトに活きることには間違いありません。

そういうわけで教師として仕事をしてきた人も多い中で、海外での日本語教育環境に興味を持ったという人もいました。

教師と一言に言っても様々な形態がありますが、まずはいわゆる教育機関(小中高など)の教師について。

公立学校の教員の場合、自治体によって休職制度の内容が大きく異なります。

さらに制度が存在している自治体であっても、採用後の在籍年数が申請条件として設定されているケースが多く見られるとのこと。そのため、参加意欲があっても勤続年数が足りない若手教員の場合、制度の対象外となってしまい、プログラム参加のために「一度退職する」という苦渋の決断を迫られることが少なくありません。

非常勤講師や私立学校の教員の場合は、契約期間の切り替えタイミングに合わせて参加するケースが見られましたが、どちらにせよ教師という仕事に就いている方達はより計画的に応募をする必要がありそうです。

日本語教師に絞って考えると、一般企業や学校への勤務をしている方々に比べると応募のハードルは低いといえそうです。活動内容が本業とかなり近いことや、海外での日本語教育現場に入って経験を積めることはその後の差別化にもつながります。一方で葛藤があるとすれば、NPはあくまでもサポートが中心のプログラムで(特に言語に関しては)、自らが授業を組み立てて挑戦する場ではないということです。もちろん、文化紹介の授業を主体的に計画し進めることはありますが、それは日本語教師としての本業からは少し離れていると言えるかもしれません。
私個人の意見としては、それでもNPに参加することはプラスだと考えます。というのも、日本語学習者に寄り添った教師としてあるべき姿を考えた時、日本の文化について調べ考え、紹介するスキルは必ず必要になると思うからです。

一般企業

NPは日本語教育や、その他教育関係のキャリアの中で挑戦するプログラム。そう思っている人もいるかもしれません。確かに、一部正しいと言えなくもありませんが、いわゆる一般企業に勤めていた状態から応募に踏み切ったNPもいます。彼らにとってNPに挑戦することははそれまでのキャリアを中断し、ある程度離れたところに飛び込む見方によっては非常に惜しい決断となりました。特に20代後半や30代など、やっと社会人としてのキャリアに脂が乗ってくるころにその路線を離れることは”一般的”ではない決断であることが多いでしょう。職歴への影響、再就職の際のブランクへの懸念から、リアルな税金保険料の悩みまで考えることは盛りだくさんです。それでも最終的に踏み切った人の特徴や考えとして、まず海外での活動に興味があること、また未知の世界に飛び込む好奇心や学びに貪欲な人が多かったと感じています。もちろん海外系のキャリアへの一歩目として利用するという手も考えられますが、それよりも、もっと自由で、むしろ帰ってきた後のことは心配しなくてもなんとかなる!というくらいの感覚の人が多かったと思います。また、思い切ってキャリアチェンジをするため、その間の期間にNPへの応募を踏み切ったという人もいました。派遣される身ではあるものの、現地は自ら計画し、実行すること、そして他の先生方との関わりの中で多くの活動を進めることになるので、より自発的に動く経験になるというのはキャリアチェンジの際に必要な能動性とも重なるのではないでしょうか。

パートナーとの距離

現役世代ならではの「パートナー」との距離というリアルな葛藤も多くの人が経験したようです。これはホームページ等には載っていないでしょうし、公に言う人はあまりいないでしょうから実際はより多くの人が悩んでいるんだと思いました。

NPは確かに公的なプログラムの範囲で派遣されますが、その形態は「雇用」ではなく、滞在費等はある程度支給されるものの「所得」があるわけではありません。応募から研修、渡航やその後の報告書作成などかなりの時間を費やすことになるため、パートナー、場合によっては家族の理解が欠かせません。

特に結婚を見据えた真剣な付き合いをしている未婚世代にとって、1年単位の時間は長くうつることでしょう。これに関しては一般化することもできないのでここまでに留めますが、中には帰国後同棲の約束をしたという方もいたようです。

なお、現地での同居は不可能で、研修の際には強く釘を刺されました。一方、当然ながら旅行等で訪れ会うことを禁止されるわけではないので、そこまでシリアスに捉えていない方も大勢いたように感じます。

定年後

本業との関係というテーマから考えるとこの世代が一番NPへの応募に障害がない一方で、定年後の本業を生活全般と広く捉えた場合、やはり様々な悩みや背景がありました。

第二の人生へ

これまでの意味とは違う「悩み」ですが、社会人人生を終えより社会から離れた環境で過ごす中で、より人と関わり、もう一踏ん張り何かに専念したくなったという人が多かったと感じます。初めは解放感があるものの、少し経つと忙しい日々も懐かしく思えるものなのかもしれません。

生活の軸がある方

一方ですでに第二の人生を踏み出し始めている中で、その延長線上に日本語パートナーズの応募を見出したという方もいました。中でも多かったのは地域の日本語教室をはじめとしたボランティア活動です。最近は特に地方でも外国人の生活者が増えていることもあり、日本語教育者の不足に関する話題も新聞等でよく見かけるようになりました。彼らの多くが口にしたのは、日本語教育は世間で思われているよりも奥が深いということです。日本語の文法を勉強したことがある人なら分かる通り、母語として使っているからと言って簡単に教えられるわけではありませんし、様々な背景を持った学習者と長期にわたってコミュニケーションを取り、いわば日本代表として文化や価値観を客観的に伝えることはかなり高度な技術を要します。そのような比較的ポジティブな悩みを解決し、より充実した活動やさらなる成長を求めたグループがここに分類されると思います。

家族の反対

さて、いくら退職したといえども人間一人で生きているわけではありませ。家族、そして地域の人との繋がり、支え合いがある生活環境から長期間出るのにはやはり協力が必要になります。配偶者や子供に反対されるというケースもあります。公的なプログラムといっても、民間の海外駐在などと違い、特別待遇の環境で、手取り足取り生活の面倒を見てくれるわけではなく、現地の標準レベルの住居で場合によっては部屋の虫や屋台の辛い食べ物と奮闘しながら活動を続けていく必要があります。ネットの時代においては家族がそのような情報を簡単に手に入れることができるので、応募させるわけにはいかないと止めに入ることも想像に難くありません。実際には反対を押し切って応募したという人もいましたが、実はこのようなあたりも選考で気にされていたと感じます。改めて自分の人生について考える機会にもなるかもしれません。

親の介護

親の介護というのもリアルな話題として聞きました。年齢的にそろそろ長期間海外に行くというのは叶わないかもしれないという状況の中、今しかない!と応募に踏み切ったパターンです。

今が一番若い

定年後の応募者に共通していたのは健康であること。そして今が一番若い!という前向きな考えを持っていることでした。研修や現地では多くの場合年下の人と活動することになり、体力もかなり消費することと思います。そんな環境でも挑戦の意欲があるという方は、人生経験を活かした大活躍間違いなしです!私も研修中多くのことを学ばせていただきました。

チャンスは今かもしれない!今しかない!

未来を思い描くのは簡単で、目標に進むのも素晴らしいこと。ただ、決断できるのは今という瞬間だけで、常に具体的で複雑な状況を乗り越えてチャンスを掴むのだと思います。だからこそ、整った環境や完璧なタイミングが来ることを期待せず、今日行動することこそ大切なのではないでしょうか。私は派遣生との関わりの中でそのようなことを考えていました。

※私自身が応募の際に考えたことはこちらの記事でもまとめています。

言語文化ブログでは「応募に迷っている方」「内定者」をはじめとした日本語パートナーズに関心がある全ての人に向けて純粋な当事者目線で振り返りをまとめていきますので、引き続きよろしくお願いします!
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